第5章 ◆休暇の後
サラの言葉に、
一瞬の沈黙が流れる。
そして、
ブワッと何かが溢れ出る空気が
前方から押し寄せた後、
「 くぅぅッ・・・!」
ヒュンっと俺の目の前を通り過ぎる何か。
・・・いや、正体は分かってんだけど。
「 あ、ありがとうぅサラちゃーんっ!!」
「 わっ、わぁ!ちょ・・・っと・・・!」
コムイの叫びと
サラの叫びが重なる。
俺は体制をそのままに
視線だけを真横へ移動すれば
予想通りの展開が目に映った。
膝立ちし
サラの腰周りにサラの腕ごと抱き締める
というか、抱き押さえるコムイが
涙を流しながら
サラの腹部に顔を擦り付けている。
「 は、離して・・・下さいッ!」
「 離さないよーぅ!僕は!
サラちゃんがこんなに成長して
僕は僕は、とっても感激してるんだっ!」
そんなやり取りを繰り広げ
二人が暴れるお陰で
たちまちホコリが立ち込めるこの部屋。
俺がいつもされてる事を
偶にはサラも味わうさ・・・。
ふぁぁ。
俺は目尻に涙を浮かべ欠伸を零せば
くるり、と体の向きを反転させた。
「 ・・・つーことで、報告終了。
俺は寝るさー。」
後頭部に当てた両手のうち
右手だけを挙げ合図を送り、
この部屋を後にしようと
挙げた右手をドアノブに手を掛けた時だった。
「 待ちたまえぇっ!ラビくん!」
「 うおっ!?」
眠気眼で外へ出ようとした俺の目の前に
ドアップで現れるコムイの顔面。
「 な、何さっ?!
話は終わっただろ?
つか、・・・は、な、せ・・・!」
サラを抱き押さえていたかと思えば
今度は俺が先程のサラの状態だ。
コムイの力が意外と強い事と
早朝からの任務(?)で
力の入らない俺はされるが儘。
「 サラ
お礼に、
ラビを好きに使っていいからね!
ほら、僕が押えてるから
早く持っていくんだ!」
「 はぁ?!おい、何勝手な・・・」
「 はーい。」
俺の否定の言葉は届かない。
代わりに明るい返事をするサラが
俺の腕を掴んだ。
・・・こいつら・・・。