第4章 ◆休暇任務
「 けど、
一番引っ掛かるのは
本部が気付いてないってことさ。」
何万といるアクマだからと言って
こんな本部近くに彷徨く2体のアクマ
ましてや、街のすぐ近く。
気付かないなんて、おかしいさ。
誰も通報しなかったのか?
『 あぁ、
隠れてたのかもね。』
俺が呟けば
ぽそりと吐かれるサラの思考。
ーえ?
・・・隠れてた?
「 ・・・隠れてた、ねぇ。」
ワンコたちに向けて
少しずつゆっくりと
足を進めていた俺は
その足を止めた。
『 戦う気が無かった、とか
ワンちゃん狙ってたのかな?』
「 んー、まぁ
人気の無い中でひっそりと
暮らしてたとして
俺達エクソシストが来るとは
思わないだろうなー。
・・・とりあえず、本部戻って報告するさ。」
特に目的もなく彷徨うアクマだって居る。
千年伯爵の命令ですら動かないアクマ
そういった存在もチラホラと聞くし
今はあの2体以外に
感じられるアクマの気配は無い。
とにかく、戻ろう
と後ろのサラを促せば
サラも頷き、
俺を追い抜いて
バリケードの所でしゃがみ込んだ。
『 狭かったでしょ、ごめんね。』
中に居るワンコ達に向けて一言詫びを入れ
ゆっくりと、バリケードに手を翳し
『 ・・・解除。』
その言葉と共に上から順に
消えていくエメラルド色のバリケード。
「 ワンッ!」
『 わっ!・・・ちょっと、
危ないよー』
バリケードが解けたと同時に
一匹のワンコが尻尾を振って
サラに飛び付く。
『 ちょ、っと・・・』
その勢いでその場に尻餅をつくサラを
ペロペロと舐めるのは
先程の母親ワンコ。
「 すげーサラに懐いてるさ。」
野良犬だから、人間に慣れてるとは言え
きっと助けてくれたって分かっているんだろう。
その姿は無邪気で
『 な、舐めすぎ・・・だよ。』
サラの顔を舐め続けるワンコを
なんとか抑えながら抱くサラは
困惑気味に笑った。
ーカチッ
こののほほんとした時間の中で鳴る
不似合いな機械音。
ーその音を俺は聞き逃さなかった。