第1章 ◆想定範囲
「はぁー、収穫無しさー。」
「今回は残念でしたね。」
「そうね。
ただの自然現象だったもんね。
凄く稀らしいけれど…。」
結局、今回の任務は
この地方でしか見られない
400年に1度到来と言われる
自然現象が起こっていただけで
イノセンスとは全く関係が無かった。
…帰るのが早まったさー。
イノセンスなら3日はこっち居れんのに…。
また付き纏われる憂鬱な教団へ帰る。
その事を考えれば考える程
どんどんと落胆していく俺を見て
「ラビ、早く帰ってサラに
ただいま言ってあげないと。」
リナリーが更に攻め立ててくれた。
…そんなニッコリ微笑まれたら
俺は肯定せざるを得ないじゃんかよ。
「そそ、そうだねー。」
口ぶりを合わせて俺は答える。
折角のサラの居ない空間で
このやり取りをされるのも少々疲れるさ…。
ーしっかし、なんで
教団の中ではサラと俺が公認されているのか、
俺がブックマンってこと皆は分かんねぇんかな。
〝歴史を記す存在〟
そのもの自体が漠然としているせいか
もしくは、そこに気を取られてられないほど
アクマとの戦いに精を費やしているのか。
…後者の場合だと
サラのような存在がそもそも居ないはずさ。
戦争中に戦士の色恋沙汰は
映画でも無い限り御法度…。
こうやって
どう考えても解決策は出て来ない
負の無限ループ。
下手にサラを傷付けても
今後の歴史に影響するかもしれんし
何より、俺にとって後味が悪い。
それに、じじぃからも
荒波立てんよう口酸っぱく言われてるし
毎日、事細かくサラとの接触を聞かれる。
俺のこのキャラは
付かず離れずの立場に居れて
心底、楽だったんさ。
なのに、なんで
サラだけはこうなん。