第4章 ◆休暇任務
「 ・・・あり?」
『 ・・・うーん、
どう見ても、居ないみたいだね。』
野良犬たちの様子を見に来た俺達は
目の前の畔を見渡して唖然とする。
そこには、
もぬけの殻状態の畔なだけで
早朝にわんさか居た子犬たちも
1匹も居らず、
静かな風が吹き抜けるだけだった。
「 なんでさ?
いつもは絶対居んのになー。
また、腹拵えか?」
『 それにしては時間早いもんね。』
・・・確かに。
今はまだ11:30
昼食にしちゃ早い。
そもそも、野良犬は
人間のように朝昼晩と
時間区分して食事は取らないが
どこぞの飲食店から
廃棄になった食材貰ってくるくらいだし
今は廃棄の出ない時間さ
そういった事情も
ここに住んで長い野良犬たちの方が
俺より詳しいだろう。
「 どこ行ったんか知らねぇけど、
まぁ居ないみたいだし、
・・・俺らも戻るさ。」
『 ・・・。』
割と見通しの良い広場で
こんだけ探しても居ないんさ。
お出掛けだろ。
そう思い、しゃがんでいた俺は腰を上げ
街の方へと向き直るが
『 ・・・。』
「 サラ?」
何故か、サラはある一点を見つめ
動こうとしなかった。
「 おーい、サラ?
どしたんさ?」
『 あっちの方、ラビ見える?』
サラの隣に立って
サラの顔を覗き込んだ瞬間に
問われるサラが指さす方向。
咄嗟に目をやると、
そこには森林へと続く小さな獣道。
「 んー?
・・・いやー、俺には何も見えねぇさ。
何かあんの?」
どれ程目を凝らしても木々しか見えず、
諦めてサラへと視線を移す。
『 まずいよ、あれ。
助けなきゃ。』
俺の問いには答えず
それだけ残して森林の方へと走り出すサラ。
「 あ、おい!
待てって!どこ行くんだよ?!」
想像以上の速さで走って行くサラを追い掛け
そのまま、俺も森林へと
道無き道を走って行った。