第3章 ◆過去と今
「へ…?」
…。
… な ん で す と ? !
「の、…ノアっ?」
俺の真横に小さく座るサラから発せられた
重々しいその言葉は、あまりにも衝撃的で
俺は思わず素の反応を出してしまう。
そして、そんな俺に構うことなく
サラは続けた。
『居たって言っても、仲間だった訳じゃないよ。
私が物心付く前の頃だったから、
コムイさんから聞いた話なんだけどね。
…生まれながらに奇怪な力があった私は、
両親からノアに売られちゃったんだって。
そこをね、クロス元帥が助けてくれたみたいで
ここに預けられたの。』
感情を押し殺しているかのように
ヘラっと笑いながら壮絶な過去を話すサラは
何処か苦しそうで、その姿に何もしてやれない俺は
サラの話す声を聞きこぼす事が無いよう
絶えず、耳を傾けた。
『ノアに居た時、
何をされていたのかは思い出せなくて
ここに来た最初の何年かは
捕虜同然の生活をしてたの。
そりゃ、そうだよね。
クロス元帥が連れてきたって言っても
ノアの仲間かもしれないし。
教団の中には私を殺した方がいい
って言う人だってもちろん居た。
毎日、殺されるんじゃないかと思うと怖くて。
必死になって、実験にも耐えて
やっと、奇怪だった力の元、
私のイノセンスが身についた時
エクソシストとして認められたの。』
頑張ったでしょ?と笑いながら
俺に向けてくるサラのその表情は
辛さがにじみ出ていた。
「すげんだな、サラ。」
俺の口からは、そんな言葉しか出てこなくて
サラの頭に優しく手を乗せた。
この俺の仕草にサラが頬を染める。
『でもね、
未だに、教団の中ではやっぱり
私の存在を否定する人って居るんだよ。
その一人一人に構って傷付いてたら
身が持たないでしょ?
だから、感情を封じ込めちゃった。
…ラビに出逢うまで、だけど。』
照れながら言うその言葉は
紛れも無く孤独を感じさせていて
俺は空いているもう片方の手を
ギュッと握り締めた。