第12章 一刻の夢
•ユヅキside
その日の夜、私はサスケと一緒に寝た
理由は数年ほど使っていないベッドで寝るのは正直ちょっと嫌だったから
ユヅキ
「ねぇ…、もう寝た?」
サスケ
「いや、…まだ起きてる。」
ユヅキ
「…あのね、」
サスケに話そう
黙ってきた私のことを
ユヅキ
「…少しだけ聞いて。」
ちょっとした昔話を
サスケ
「…。」
ユヅキ
「5歳の誕生日の日の話だよ。」
サスケ
「ユヅキが消えた日…。」
そう、私が攫われた日
ユヅキ
「いつものように森でいたら突然人が現れたんだ。最初はね、こんな所に人が来るなんて不思議だなぁって思ってた。でも次の瞬間、まだ遠くにいたはずのその人は私の目の前に立ってて、私の名前を呼んだの。」
『初めまして、ユヅキちゃん。』
今でも覚えてるあの人が言ったこと
『私と一緒に行きましょ。あなたは私のものになるのよ。』
あの恐怖も気味の悪さも全部
思い出すだけで手が震えてくる
ユヅキ
「あの人は笑って私をものと言った。言い知れぬ何かを感じて私は逃げ出そうとした。でも逃げられなかった。すぐに捕まって私は眠らされた。目が覚めると知らないところにいた。縛られてる訳でもないのに身体は動かなかった。そして、術によって精神の檻に閉じ込められた。」
サスケ
「もう、いい。無理に話す必要はない。」
サスケに自然と手を握られていたことに気付いた
その手は昔と変わらず温かった
ユヅキ
「サスケ…。」
サスケ
「震えるくらいなら話さなくてもいい。ずっと傍にいてやる、守ってやる、だから隣で笑ってろ。」
(ユヅキを苦しめるものは、オレが全て消してやる)
繋がれた手からは何も感じなかった
いつもなら嫌という程感じ取れるのに、サスケからは一切なかった
ユヅキ
「ごめんね。」
サスケに色んな意味を込めて謝る
私のこと、兄さんのこと、一族のこと、未来のこと
全て知らなければ笑っていられたのに