第6章 Chapter 6
複雑な気持ちを抱えたまま俊はなににも集中できずにいた。
京香は、もう水輝に気持ちを切り替えたのか。
もう俊のことは好きじゃないのだろうか…
そんな考えをずっと反芻しながら、
そんな考えを中心に頭はグルグル回っていた。
ぐるぐるぐるぐる…
ぐる「しゅーん」
渦巻きが止まって見えたのは部長の真緒の顔だった。
気づいたら部活だった。
いつの間に授業が終わってたんだろう、ってくらい意識がなかったようである。
「あぁ、真緒」
「今日クラリネットのみんな風邪とやらで休みみたいだから、」
「あーはいはい」
クラリネットのやつらが部活をズル休みするのはよくあることで、あまり気に留めていなかった。
なんせ、一か月に一回はあることだから。
そうなるとパート別練習はいつも京香と2人きり。
うん?
京香と、2人きり…?
「俊?行かないの」
少し冷たい気がする口調。
長い髪は大人っぽさを醸し出す。
「行く」
「じゃあ、いつものところでね」
そうさっさと歩きだす。
「いつも2人で行ってるのに、京香のこと怒らせた?」
「知らない」
そう言うしかなかった。
その一方で、フルートの人ごみに紛れ、不安そうに2人を見つめるのは、玲衣。
そんな様子を水輝も不安を抱えながら見つめる。