第6章 Chapter 6
「しゅん~!!この曲すごくいいの!聴いてみて!」
そう言って玲衣が俊に片方のイヤフォンを差しだす。
「あ、ほんとだ。」
「でしょ!昨日ついつい買っちゃった~~」
昨日とは打って変わって元気な玲衣に疑問を感じながらも、俊は玲衣が怒っていないことに安心する。
その満足気な笑顔にも安心する。
「イヤフォン片方づつってカップルみたい」
「だって俺たちカップルじゃん」
「うん」
少し照れたような笑顔。
いつも通りの玲衣に安心する。
「あの2人ラブラブだね」
「昨日はケンカ?してたのに」
「うん…」
京香は少し複雑だった。
玲衣が安心しているのは昨日の京香の言葉のせいだろう。
でも、嘘だった。
京香の心が少し痛む。
「京香…」
「京香!!」
水輝が言いかけた時、京香の名前を呼んだのは佐野だった。
「佐野、どうしたの?」
「購買でおやつ買いすぎたからあげるー!」
「あ、ありがとう…」
「あれ、髪切った?」
そう言って佐野は京香の髪を触る。
「気づいたー?でも2㎝くらいだよ?」
「俺、そういうことには気づくから。」
そう言うと佐野の手は京香の肩へ移動した。
「佐野、手を放して」
不機嫌な口調な水輝。
佐野を睨む目は今まで見たことない目だった。
「水輝、嫉妬~~?」
「嫉妬だよ。」
キッパリという水輝に佐野は少し怖気づく。
「その手、離して」
佐野が手を放した
かと思えば
「いやだもーん。俺だって京香のこと好きだからさ!!べー」
そう言って京香を思いっきり抱きしめる。
「お、おい!」
水輝が慌てて引き離そうとすると、佐野は逃げていった。
「京香、大丈夫?」
「うん…ありがとう」
「ごめんな、あいつ」
「水輝が守ってくれたから、大丈夫だよ」
その微笑みは、水輝には眩しすぎた。
一方で京香は、水輝のことをもっと好きになった気がした。
「ありがとう」
その様子を俊は複雑な気持ちで見ていた。
玲衣は水輝と京香の絆に安心した。
そして昨日の京香の言葉は嘘じゃなかったと確信した。