第5章 chapter 5
「…」
「…」
水輝と京香の帰り道。
2人の会話が続かないことはしばしばあるが、今日は一段と空気が重い。
水輝にとって京香はなにを考えてるかわからないし、
告白を断ってたとはいえ少し気まずさを感じる。
一方京香は水輝がどう思ってるか不安で、話しかけられずにいる。
「今日は…」
水輝が沈黙を壊したが、声が裏返ってしまった。
「…天気が悪いね」
水輝の精一杯。
「そうだね」
「京香に告白された日みたい」
「うん…」
京香はまた複雑な顔をしている。
また静かになってしまった。
マズいことを言ってしまった、と水輝は気づく。
「なんで、オーケーしてくれたの?」
「え?」
「告白」
あぁ、と水輝は思う。
「好きだったから」
「ふふふ」
「ちょっと、笑わないで、真剣だったのに」
「嬉しいの」
ウレシイノ
水輝にはそれが本音とは思えなかった。
「京香、
なにがあったかは知らないけど、なにがあっても受け止めるから」
「え?」
京香のすごく困った顔
「俺のことを好きじゃなくてもいいから。隣で支えるから、京香が泣きたいときは肩を貸すから」
「水輝…」
「なにも言わなくていいよ」
なにを言ってるんだろう、と水輝は思ってしまった。
カッコつけて気持ち悪いと少し後悔している。
しかし、その一方で京香の心は少し揺らいだ。
「ありがとう…」
この人なら
もしかしたら
好きになれるかもしれない。
水輝の笑顔を見て京香は自分の揺れる心を自覚した。