第10章 見えないライバル
「"SPiLL MiX~スピル・ミックス~"。様々な楽器の奏者やシンガーソングライターからなる8人グループだよ。全員高校1年生で、様々な曲をリリースしているんだけど、毎回のようにメンバーや人数が違うのが特徴の一つ。ダンスからバック演奏まで自分達で行うのがスピル・ミックスのスタイル。地方からのメンバーを多く含むので地方ライブも多いんだよね。」
縁下がスラスラと話したことに華楓も含め驚いていた。
「なんか情報サイトの文章丸々読んでるみたいだったな」
菅原があまりにも綺麗に語った縁下に思わず言った。
「俺の母親がドラムの人にハマっててその影響かと…」
「へぇ…凄いんだな華楓」
本当はよくわからないが凄さだけ理解した日向。
「縁下のお母さんはドラムのあの人好きなんだな…俺の母さんあの名前忘れたけどボーカルの人、華楓ちゃんの隣にいる人好きなんだよね」
菅原と縁下はいつしか世間話のようになっていた。
「あのボーカルのやつ凄いっすよね!なんか才能の塊っつーか…」
「田中、手も動かそうな」
田中を世間話の輪に入れる許可を出さない縁下。
「もう日向スピル・ミックスのことわかったでしょ?勉強続けるよ」
華楓の答え合わせが終わり日向の答え合わせに移り、華楓は床に寝そべった。
あーそっか…金曜日なんだよねライブ…
ぼーっと歌詞を覚えているかやギターを間違えずに弾けるかなどを考えているともう澤村が来ており、朝練の時間になっていた。
「よいしょっ…」
体勢を起こした時に田中が話し始めた。
「じゃあ土曜にウチな。華楓も来いよ!」
「うっす!数学しか出来ないからね」
そして部室にいた全員が体育館に向かった。
放課後の部活が終わりジャージから制服に着替えた華楓は駅前に向かっていた。するとLINEのメッセージ受信音がなった。
"駅着いたよ"
「やばやば…」
"今向かってる!"
返信をし、ギターを背負いながらも懸命に走り駅に向かった。
あ、いた!
駅前にいるのを確認し近づいた。
「ごめん多月!遅れて」
「別に大丈夫。気にしてないから」
そう、彼が御門多月(みかどたづき)。田中達が才能の塊と呼んでいたスピル・ミックスのメンバーである。