第10章 見えないライバル
「部活もやってこっちもやって大変じゃない?」
スタジオに着いた2人は練習するために楽器を出したり準備をしていた。とは言うものの華楓はほとんど何もせず、ペットボトルの水を飲みながらスマホを弄っていた。その華楓の姿を当たり前のように見て見ぬふりをしながら話しかける多月。
「んーまぁ大変だけどさ…楽しいし、去年に比べたらこっちの方が楽だし、何よりやってて良かったって思うこと多いから…別に後悔とかどっちか辞めたいとは思わないよ」
「凄いな本当に」
「そうかな…」
華楓が多月に適当に返すと同時にスタジオ内をスマホのカメラに収めた。
「え、今何撮った?」
「T○itter用の写真だよ。」
そう言うと華楓はTwit○erに写真を載せた。
「よしっ…じゃあやるか!」
手に握っていたスマホとペットボトルを置きギターを用意した華楓。
多月が作曲して、あたしが作詞する。それがあたし達スピル・ミックスのスタイル。
今までにないような集中力を見せる華楓。華楓は歌う時はバレーボール関係を始め色々なことは何も考えずに歌う。及川のこともテストのこともそして二口のことも。その歌の歌詞とメロディと共に歌うメンバーだけを考えている。
そして歌い始めた華楓の声は透き通っていて迫力のある声。世の中の人が華楓に惚れるのはそんな魅力なのかもしれない。
その中の1人として二口がいるのも事実であるが鈍感な華楓にはわからない。
「はぁ…久しぶりに歌ったわ…」
1通り練習し終えた華楓はペットボトルの水を飲んで言った。
「久しぶりの割に出来てたけどな。というか片付けろ」
多月は、準備はともかく片付けはやってくれというのが伝わってくる口調で言った。
「んー今やるー」
「マジでやれよな」
ようやく片付けへと動き出した華楓に思わずため息が出る多月。これでも華楓はリーダーであるが、この際はもう関係ない。
「よくこんなんでリーダー続けられてるよな…」
「あ?何か言った!?」
「…別に」
多月は慌てて誤魔化す。