第9章 チャンス到来
「青根!」
華楓らが期末と補習の恐怖で叫んでいた頃伊達工業高校の体育館では部活を終え、片付けに負われていた。その体育館に青根を呼ぶ二口の声が響き渡った。
「金曜日先帰るから戸締まりよろしくな」
青根は二口に向かって大きく頷く。その会話を聞いていた1人が二口の方にそーっと近づいて話しかけた。
「もしかして…あそこの公園のやつ、ですか?」
聞いてきたのは1年の作並。作並はある人にバレないようにするためにあえて名前は出さなかった。伊達工業高校の側の公園で野外ライブをする雪宮華楓の名前を。
二口は青根から作並は知っていることを聞かされていたので動揺の様子も見せずに頷いた。
「え、どういうことですか二口先輩っ!」
そう、作並が隠している相手は同じく1年の黄金川のこと。嘘をついたり隠し事をするのが苦手でとにかく鈍感な黄金川には言ったら不味いと部活内では少し話題になっている。
「あ、黄金川くんモップがけやろう!」
咄嗟に対応をしようとする作並。
作並ぃ~お前はなんていいやつなんだ。鎌先さんよりいいやつだよ!
「ィクシッ…誰だ俺の噂してんのは…」
その頃鎌先は大きなくしゃみをしていた。
そして二口は心の中で涙が溢れそうになる。そんな二口の視界に追分監督が入ってきた。
あ、でも監督はバレたらやばいな…他校の女子となんて言ったら…しかもよりによって相手がライバル校の女子マネであの雪宮華楓なんて知られたら。
一気に二口の心の涙腺は消え鳥肌に変わった。
「二口頭おかしいのか…?」
二口の温度差を見ていた追分監督は不思議そうにしていた。
帰り道。二口と青根は並んで下校していた。すると二口の携帯がなった。
「…誰だよ……あ」
二口の携帯の画面には[雪宮華楓]の文字が点滅していた。