第1章 再会
インターハイ予選。仙台市体育館。
「烏野高校 排球部」と書かれたジャージを着た集団の後ろに華楓はいた。
会場内で1試合目のコートに移動していると途中で集団がピタッと止まった。集団の後ろにいた華楓には前では何が起きているかわかるはずもない。
「おい二口手伝えっ」
前の方で声がした。その声を聞いて華楓はとっさに思った。
えっ前で何が起きてるの?てか二口って…
「ちょっちょっとすみません」
先輩達の間を割って前に進もうとするがなかなか進まない。
二口ってそういる名前じゃないよね?あの二口だよね!?
ようやく前に出てきた時にはもうその集団は私達に背を向けていた。
でも…あの背格好…やっぱりにろだよ。
「どうしたんだ?」
「あっうん。なんでもないよ」
西谷は華楓に聞いた。でも何事もなかったようにスルーした。
後で日向に聞いたらその集団は伊達工業高校というところだった。常波に勝ったら当たるとこらしい。
烏野は常波に勝ち、伊達工にも勝った。伊達工との試合を終えコートから去るときに伊達工の方を見た。
やっぱり…にろだ…。
二口は集団から少し後ろの方にいたので思い切って華楓は声をかけた。
「にろ!」
二口は振り返って少し驚いた表情で華楓を見た。
「…華楓?」
「うん。そだよ!」
「そっか、烏野に行ったんだ。しかもバレーボールやめて…」
「あっいや…まぁ…」
やばばば…二口不思議がってる!
華楓はとっさに視線をそらし、ごまかした。
「あっそう…。じゃあまた会えたらな」
そう二口は華楓に告げると素っ気なく去っていった。