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日々草をたずさえて【青春×機関銃】

第6章 開幕


「緑さーんっ!お、お待たせしましたぁぁっ!!」

空気を一変させるような声が会場に響いた。
声の主は、自転車の後ろに女性を乗せた状態でやってきた。

「ふじもん。市」
「すみません。昨日の夜に出発したのですがこんなギリギリに・・・」
「うん普通はそれでも着かないんだよ。遠いからね」

会話から察するに、自転車でこの会場までやってきたようだ。
花子はそれがどれほど大変か知っていた。
何故なら緑にふじもんと市と呼ばれたこの二人を知っているからだ。
藤本高虎と赤羽市。
花子と緑も働いている、星白総合病院の研修医と看護師である。

「市もお疲れ。俺の車に乗ってよかったのに」
「いえ。緑先生に乗るなんてそんなはしたないことできません」
「や、乗るの車だからね。違うよ」

真面目な顔で言っている赤羽は、冗談なのか本気なのかが分からない。
赤羽の緑に対する反応を見る限り殆どが本気なのだろう。
花子の赤羽に対する印象は、緑永将に対する狂信的敬愛の持ち主、である。

「結局間に合ってしまいました。こいつのせいで遅刻失格になったら抹殺する理由ができたのに」
「おっそろしい後輩っス・・・」
「まあまあ」
「あ、山田さんじゃないっスか。今年は来たんスね!」

花子に気がついた藤本が話しかける。
去年はトイ☆ガンガンが参加しなかったこともあり、TGCを見に来ることはなかった。

「藤本君は相変わらず自転車なのね。免許取ればいいのに」
「免許取ったら抹殺理由が減るので取らなくていいです」
「赤羽さんは本当に藤本君に厳しいのね・・・」

後輩にまで冷たくされる藤本は、緑との相性はいいのだろう。
緑のあの意地悪な性格を喜んで受け入れる人は、花子は藤本以外には知らない。
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