第5章 戦闘訓練
「・・・わー・・・今のちょっとカチンときた・・・」
松岡の言葉に何かのスイッチが入ったかのように雪村が豹変した。
雪村は普段から松岡に対してあまりこのような態度をとることはないが、極稀に本気ではなくこの態度が出ることがある。
「てか原稿の締め切りで寝不足なだけだし。二対一だからって手加減しないから。後で言い訳しないでよ、この体力馬鹿」
「はっ寝不足言い訳にしてる時点でアウトだな。かかって来いよ。この銃でテメェの股間びしょびしょにしてやるぜ」
「そのセリフまんま返すよまっつん」
「おーおー、やれるもんならやってみろや」
「そんなに大見得切って負けたら容赦しないからね。本気でやりなさいよ」
「やべぇ・・・花子が一番怖ぇかも・・・」
足で小競り合いをしながら言い合っている二人に向けて花子が口を挟む。
二人に向けてではなく、完全に松岡に向けての言葉だ。
長い付き合いだからこそ、松岡が花子が本気で怒ると怖いということは身に染みて知っている。
「・・・蛍、やっぱり元気ねぇな。会話入って来ねぇし」
「え、あ、はい、元気です!!」
「なんだその返事」
普段なら立花も元気に会話に入ってくるはずにも関わらず、今日は二人と花子の会話を眺めているだけで入ってくることすらしない。
花子も立花には元気なイメージを持っているため、いつもとは違う立花の様子が心配で仕方がなかった。
今思えば、前回の定例会の帰り道の途中から様子がおかしかったようにも感じる。
しかし松岡とは仲直りしているし、その後またいざこざがあったわけでもない。
何があって立花がここまで様子がおかしくなったのか。
そこまで考えて、花子は一つの仮定に辿り着いた。
定例会に参加してから様子がおかしくなった。
つまり定例会で何かがあったか、何かを言われたか。
どちらにせよあの立花をここまでにする原因。
一つだけ考えられる原因があった。
「ほら、元気出せよほーたるっ」
花子が一人考えに耽っていると、松岡が立花に向かって水鉄砲を撃っていた。