第24章 《 side I 》幸せの裏で
シズちゃんとを見かけた
馴れ馴れしくシズちゃんの腕に抱きつくは、幸せそうで、好きな人に向ける目をしていた
俺から離れている1ヶ月間は一切干渉しないって決めてたけど、
なんだろうな
焦燥感に駆られる、とでも言うのか
俺らしくないのは重々承知だけどさ
…なんであんなに嬉しそうな顔してんの
気持ち悪い
の存在までもが気持ち悪くなってくる
好きだ
の事は確実に好きだ
でもシズちゃんに向けられたその笑顔は気持ち悪い
気分が悪いよ
なんだよ
俺に向けてくれたあの時の、初めて会った日の、初めてキスした日の、初めて肌を重ねた日の、初めて一緒に目を覚ました朝の笑顔は
あれはなんだったんだよ
シズちゃんなんて眼中になかったくせに
誰でも良かったのかよ
…そうだよね
俺と出会うまで、彼女は池袋でひとりぼっちだったんだから
自分を愛してくれる人なら誰でもよかったんだ
新宿の夜は寂し気だ
雨が、よく似合う
帰ってきたものの、まだコートは脱いでいない
新宿を見渡せるこの窓から漠然と遠くを眺めた
いきなり降り出してきた雨を避けることができず、髪も服も濡れたまま
コートのポケットに突っ込まれたままの拳に力が入る
長くもない爪が手のひらに食い込んだ
痛い
痛い
辛い、悲しい
寒い
冷たい
こんな気持ちを感じている自分が気持ち悪くて仕方ない
あと少し…あと、少しだけ
少しだけ我慢すれば、1ヶ月を好きにできる
早く俺のところに帰ってきて
バケモノにはやらない
渡してたまるか
ねえ、
君は俺のことを少しでも思い出してくれてるのかな
君の幸せの裏で、俺は苦しんでるんだけどな