第23章 《 side S 》寂しがり屋さん
頭を撫でられる茜の頬に、テディベアの足が触れていた
それをくすぐったそうにしてからじっと眺める茜
「この子、おねえちゃんの?」
そう問いかけられて笑顔で答える
「そうだよ」
「可愛いね!」
俺をロッタリアのガラス越しに見ていたあの時と同じ
キラキラの瞳でテディベアを眺める
まるで宝箱の中の宝石を見ているみたいに。
そんな純粋な子供の瞳に気圧されない奴は少ないだろう…
「欲しい…?」
が困ったように笑う
対照的に茜は満面の笑み
「えっ…くれるの?」
少し複雑な気持ちになっていると、の視線を感じた
どことなく寂しそうな目
子供に優しくしてやりたいっていうの純粋な気持ちと、俺が取ったテディベアを手放したくないっていう本音が入り混じってる
そんなことくらい目を見りゃ分かるさ
「茜、くま好きか?」
「好き!」
「じゃあ、良いもん持ってきてやる」
俺は茜の頭を撫でながらに微笑みかけ、1人で雑貨屋に入った
こんな店に入ることなんざなかなか無い
でもここは雑貨屋だ
女の好きそうなもんならたんまり置いてある
店内を一通り見渡した後、リボンやらビーズやらが付いてるくまのストラップを手に取った
茜が好きそうだ
それをレジに持っていくと、店員は「プレゼントですか?」と聞く
はやく2人のところに戻ってやりたかったから「いいえ」と言うと、
店員は「ご自宅用ですね」と再確認した
「待たせたな」
は茜の目線の高さにしゃがんでやってる
話の内容は分からないが、茜はケラケラ笑ってた
子供を相手にする女って案外良いもんだ
すげえ微笑ましい
「ほら、これ茜にやるよ」
そう言って商品を差し出すと、紙袋をガサガサ言わせながら中を覗いた
その次にの顔を見る
「なにが入ってるの?」
「みてみて!可愛い!」
やったやった!とはしゃぐ声が耳に響いてくる
「よかったね」
がそう言いながら、自ら茜の頭を撫でた
自分のことのように嬉しそうな笑顔だ
「ありがとう」
「お礼は静雄おにいちゃんに言わないと」
その後、ありがとう!と言う茜の大きな声を聞いた
そしては背伸びをして、俺だけに聞こえるくらいの声でありがとうと囁いた