第23章 《 side S 》寂しがり屋さん
今隣には、テディベアを抱いて歩くがいる
黒いリボンが耳についたやつ
結局これを取るまでに11回かかってしまった…
いや、金の面では別にいい
1100円もかかったなんて全然気にしてない
ただ、一発で取れたら格好良かったのになとは思った
「ありがと、静雄」
「お前、ありがとうって今日何回目だよ」
「嬉しいもん、仕方ない」
テディベアの頭部に顔を埋めて抱きしめる
そんな姿は幼く見える、可愛い。
ゲーセン行ってよかった
池袋の街並みに足を運んでいると、が急に立ち止まった
俺も即座に立ち止まる
「どうした?」
目線の先には、女が好きそうな雑貨ばっかり
「2人であんなの使いたいな…」
雑貨屋は分からねぇ
チマチマしたもんがいっぱいある
ちっこいのがいっぱいある
がどれを見て発言してるのか全く分からなかった
「入るか?」
とりあえずそう言ってみると、は嬉しそうに頷いて店の方に足を進める
俺も同じように向かおうとする
その時、
どこからか、小さくて速い足音が聞こえてきた
知っている音だ
「静雄おにいちゃん!!!!」
「おお茜!久々だな、元気してたか?」
そう言いながら、太ももにがっちり抱きついて離れない茜の頭を撫でた
「元気!元気だよ!」
いつものやり取りだ
いつものやり取りだけど、今日は違う
俺のベストの裾をつかんで寂しそうに顔を見上げるがそこにいた
「こいつは茜。詳しくは話せねえけど…まあ、訳あって仲良くなった奴。」
は俺の顔を見て、その後茜の顔を見て、優しい笑みを見せた
「んでこっちは。俺の大事な子。」
茜は人見知りだからどんな反応をするか不安だった
けどそんなに心配はいらなかったみたいだ
「大事な子?静雄おにいちゃんの大事な子だったら、いい人だよね」
「おう。いい人。」
俺はの、テディベアを持っていない方の手を取り、茜の頭の上に乗せてやった
その手は優しく、小さな頭を撫でる
「おねえちゃんかぁ…静雄おにいちゃんの大事な子かぁ…」
茜は嬉しそうに、ふふふ、と笑った
もめちゃくちゃいい笑顔だ