第22章 《 side S 》 あなたのすきなもの

ルーを入れて煮込む


少し大変なことにはなったけど、肉は何とか食べれそうだ


「しっかり混ぜてね〜」
「おう、任せとけ」

私は皿とスプーンを用意しながら、彼の、どこか嬉しそうな横顔を見た


「静雄、ビーフシチュー好きなの？」
「まあな。クリームシチューも好きだけど」
「じゃあ…他に好きな食べ物、教えて」

こうやって、考えるときは必ず首をかしげる

「甘いもんが好きだ」

「プリンとか好きだよね」
「プリンは王道だろ」

「他は？」

少しだけ傾いた首がさらに傾く

「んー…


ああ、パルコの中にあるパンケーキがうまい店、知ってっか？」

「うんうん」

「その店にあるパンケーキは基本的に全部好きだな」


いや…驚いた…

こんなに背が高くて声も低くて男らしい人なのに、
好きな食べ物がパンケーキ？

これが俗に言うギャップ萌えなのかもしれないと思った
駄目だ、やっぱり静雄は可愛い


「でもな、俺がその店に行くと周りの客はびっくりした顔でこっち見る」
「うん、無理はないと思うよ…」

静雄にギャップ萌えしてる人は私だけじゃない気がするな


「今度、2人でそこ行こうか」

私がそう言うと彼は鍋を混ぜる手を止め、目を丸くしてこちらを見た


「いい…のか？」
「駄目なはずないでしょ？」

「……おう、ありがとな」


そう言いながら私の髪をくしゃっとする


改めて実感した

彼は男性的な格好良い部分と、それに似合わない究極の可愛らしさを持ち合わせている



「できたかな…？そろそろ食べよっか」

「おう！」