第22章 《 side S 》 あなたのすきなもの
今日の私の眠気は異常だ
寝不足というわけでもないし、昼寝も少ししたのに
「ほら、最後の一口」
静雄の左手にはプリンのカップ
右手には、私に向けられたスプーン
瞼の重みに抵抗しながら最後の一口……
「…おいし…」
「なあお前、眠てぇんだろ?そろそろ寝るか?」
カップをテーブルに置いて、しっかりと開いていない私の目を見てそう問いかけてくる
「でも、今日………」
「ん?」
今日は…するって言ったから…
「する…」
「何をだ?」
「………嫌だ言いたくない」
「…ああ、あれのことだな」
静雄はそう言って私の顔を覗き込み、大きな手で私の頭を撫でてくれた
とても優しい目をしてる
「眠い時に無理矢理するなんて趣味は無え。…それに、なんかもういいやってさ。」
「……それは悪い意味で?」
「んなわけねぇだろ。今日抱かねぇ代わりに、次お前の目がぱっちり覚めてる夜は覚悟しとけってことだ」
「うわぁ、かっこいい…」
サディステックなセリフとは裏腹に、彼の瞳は優しさの色を帯びていた
ぼーっとする意識の中で、その綺麗な瞳だけが輝いている
「寝るぞ」
そう言われたかと思うと、突如身体がグッと浮く
気づいた時には私は、少女漫画でしか見たことのないお姫様抱っこをされていた
「わっ!やめて静雄!私重いから!」
「重くねぇって。口では抵抗してっけど、ちゃんと首に腕回してんじゃねぇか」
自由が利く状態なら静雄を思いっきり突き放すところだった
でも今の状態でそれは危ない
どうしようもなくて首元に顔を埋める
「もう…」
恥ずかしくって嫌だったはずなのに、静雄の腕から離れてベッドに寝かされた時、
静雄の体温が肌に感じられなくなった瞬間は、何故だか寂しくなった
一緒にベッドに潜り込むと彼は、私を柔らかく抱きしめてくれる
あったかい。
私の額には手を添えられ、優しいキスが落とされた
「おやすみ」
そう言う彼に、私は同じように
「おやすみ」
と返事をした
「プリンよりもお前の方が好物だ」
「分かってるよ、そんなこと」