第3章 赤い瞳
一通りの会話が終わったところで、私は欠伸をする
臨也さんがニコニコしている
‘‘格好いい”という印象ばかりだったが、
笑顔はとても可愛かった
そんなことを考えている自分がまた恥ずかしくなる
「今日はうちに泊まりなよ」
「え、いきなり…」
「なに?だめ?」
可愛い、なんて思ってる最中にそんなこと言われると…
「だめじゃないです、けど、服とか…」
「これと同じのがあるんだ。ヨレヨレになっちゃって着ないやつ」
そう言って、着ているVネックの黒いシャツをつまむ
臨也さんが話しながら部屋を出ようとするので慌てて着いて行く
別の部屋に入ってしまったけど入りづらくて外で待っていると、
クローゼットからからシャツを1枚持ってきてくれた
「あの…シャツ1枚ですか…?」
その言葉に反応して、臨也さんが薄暗い廊下に立ち止まる
「別に良いんじゃない?俺のだから丈も長いし
ワンピースみたいになると思うよ」
いや、さすがにそれは無理があると思う…
「えっと、下着とかは…」
その言葉を受けて彼がニヤリとするのが、薄暗くても良くわかる
まるでその笑みは、暗い場所で見せるためにあるかのように
私に近づいてくる臨也さん
屋上で話した時と同じように、自然と足が一歩下がる
その結果、私は廊下の壁と臨也さんに挟まれる形になった
右手で髪を撫でられ、顔を近づけてくる
「まだシャンプーの匂いがする。
風呂に入ったのは今日の昼以降ってところかな」
「ええ、昨日は疲れてしまってて、
帰ってからすぐ寝てしまって…昼間に…」
声を震わせず返事をするのに必死だった
持っていたシャツが落ちる音がして、
左手が肩にまわされた。
「それならまだ下着も替えなくて良いんじゃない?」
左手はだんだん上に来て、首筋に触れる
体は熱いのに臨也さんの手は冷たくて…気持ちよくて。
「んん…」
思わず声が出る。自分でも聞いたことのないくらい甘い声
首を指一本で撫でられる
自然と息が上がっていくのが分かる
体が熱い…
「なに、どうしたの?あんまり下着濡らしちゃ後々大変だよ」
『朝帰りなんだから』
耳元で響く声にゾクゾクする
「いざや…さ…」
熱い…暑い、苦しい…もっと、触れてほしい…
首筋に触れる指一本じゃ、耳にかかる吐息だけじゃ、物足りない。