第21章 《 side S 》 池袋の人々
「チーズバーガー、食えるか?」
そう言って差し出された紙袋
「いいんですか?…申し訳ないです」
「遠慮すんな」
車内に絶えず流れる、今話題の女性アイドルの曲
後部座席は、ライトノベルや漫画で溢れている
私が車内に入る時に例の2人が片付けてくれたとはいえ……
「そういやお前ら、ちゃんと名乗ったか?」
「あっ」
「無礼な奴らだな……」
「ごめんね、私は狩沢絵理華。こっちのハーフはゆまっち……んっとね、遊馬崎ウォーカーで、運転手は渡草っち」
「運転手って言うな」
「いつも運転してくれる感謝の気持ちを込めて、運転手って言ってるんだよ〜」
私はそんな掛け合いを聞いて思わず笑ってしまう
「で、帽子の人はドタチン」
「その呼び方やめろ」
一通り名前を聞いたところで私も「 です」と名乗った
「門田さんは静雄さんの、高校時代の同級生なんスよ」
ああ…どうりで親近感があるわけだ
「静雄に彼女ができたって聞いた時は驚いたな……」
「高校時代は告白されたりしてなかったんですかね?」
かどたさんは少し間を置いて、助手席から、後部座席に居る私の方を見た
「聞きたいか?」
その表情は険しくなかったから、悪い話ではないのが見て取れる
「あれは高2の冬、バレンタインの出来事だ…」
後部座席に座る3人で同時に頷く
「静雄のロッカーにチョコレートを入れようとした女がいたそうな…」
『うんうん』
「ロッカーを開けるとそこには…….
タランチュラが……」
背筋がゾワッとした
どうして静雄のロッカーにタランチュラ…
「あーなるほど、分かったよドタチン」
「そうだ、アイツの仕業だ……
臨也が、な…」
ああ……
やっぱりね、本当に仲悪かったんだ、あの2人…
「まあその後静雄は臨也を追っかけまわして、臨也は逃げ回ったって話だ」
「イザイザとシズシズがボーイズでラッ……うっ……」
ゆまさきさんの手が私の前を過ぎ、狩沢さんの口をふさぐ
何事かと思ったけど、それはそれで面白かった