第20章 《 side S 》 池袋の日常
「お姉さん〜、また会いましたね!これってまさか…運命ってやつ?!」
ノートの陳列をしている時だった
私の隣で嬉しそうに笑う少年には見覚えがある
それと、その後ろにいる2人
「紀田くん、帝人くん、杏里ちゃん!」
「お久しぶり…です」
「俺のことは正臣でいいっすよ〜」
「ごめんなさい、正臣って本当に馴れ馴れしいから…」
「奥手くんにはこの馴れ馴れしい話術に隠された、俺式ナンパテクニックが分からないだろうな〜」
やれやれ…という表情を見せた帝人くん
クスクス笑う杏里ちゃん
すごく微笑ましくて、可愛い
私は手に持っていたノートを全て棚に並べ、空になった段ボールの蓋を閉じた
「そういや巷で話題のあの件、お姉さんが絡んでるでしょ?」
そう言いながら顔を覗き込んでくる紀田くん
“あの件”?
「この間、折原さんと知り合いだと聞きましたし、平和島さんと話してるところも見たので…」
遠慮しがちな距離にいた杏里ちゃんは、興味深そうな表情でそう話す
「“折原臨也と平和島静雄が、1人の女の子を巡って大戦争”……っていうやつだよね?」
「そう!それ!帝人が知ってるなんて……もはや池袋人なら誰でも知ってる大ニュース…!!!」
なんだか嬉しそうに両手を広げて語る紀田くん…
「いや、そんな大層なものじゃ……」
私は目の前で、否定するように手をひらひら振った
「素敵ですね、2人の男性から同時に想いを寄せられるなんて…」
「え、園原さ…」
そんな2人をニヤニヤと見ている紀田くん
ああ…そうなのかなとは思っていたけど…
やっぱりこの3人の中には恋愛関係があるみたいだ
青春だなぁ…
「もし2人のどっちかを選べなかったら、俺っていう選択肢もあるんすよ?」
そんな彼の言葉に私は小さく笑って、「ありがとう」と告げた