第20章 《 side S 》 池袋の日常
「あ!!」
「どうした?」
目玉焼きのトーストを片手に、私は朝の情報番組を見ていた
それは、“彼”が主演を務める新作映画の報道
「羽島幽平!知ってる?いやぁ、知らない人はいないよね…!!」
「ファン…なのか?」
静雄はどこか引きつった笑顔を見せてそう言う
どうしよう、なんて答えよう
どうしてそんな表情をするんだろう…
もしかして幽平さんのこと苦手…とか?
もしかしてもしかして、芸能人とかに嫉妬しちゃうタイプ…?
少し躊躇ったけど本音を伝えてみる
「デビュー作からの…ファンです…」
彼は手に持っていたマグを勢いよくテーブルに置き、背筋をピンと伸ばした
「吸血忍者カーミラ才蔵!!!」
「すごい、知ってるんだ!!!」
「当たり前だろ!あいつにもあんなアクション映画が務まるんだなって……あんなに幼かった幽が……立派になって…って思ったら……感動して……」
「え?」
「…え?」
幼かった、幽??
かすか?
何、それ、本名??
幼かったってなに、いつの話?
私は食べかけのトーストを皿に置き、紅茶を喉に流し込み問いかけた
「静雄は幽平さんの、お友達か何か?」
静雄は腕を組んで黙り込んだ
「隠してねぇし…別にいいか…
俺の弟…平和島、幽」
そう言いながら視線は、幽平さんが映し出されたテレビに向けられる
「あら……あら、あらら…また、そんな冗談を……」
「いや本当だって」
ああこの口調と表情………本気(マジ)だ……
「俺が嘘吐くよくに見えるか?」
「見えないっす……」
驚いた。これは本当に驚いた。
池袋最強と言われる平和島静雄の弟が、今、その演技力の高さと持ち前の美貌で世間を騒がせる羽島幽平だなんて……
ああ、平和島兄弟……
平和島兄弟、凄まじく格好良い……