第17章 直接対決
「ねえ、シズちゃん
今のは君の彼女かもしれないけど、俺は君の何十倍もと同じ時間を過ごしてきた
君は圧倒的に不利なんだよ
それを分かってるのかな
俺は、君にとって絶好のチャンスを与えたんだ
この件は黙って承諾すればいい……
先攻は、シズちゃんでいいよね」
「待てよ。そんなの後攻の方が有利に決まってんだろ」
…確かにそうだ
2ヶ月後に決断を下す
その直前まで一緒に過ごしてた方との印象が強くなるのは当然のこと
「あーあ。自信ないのバレバレだよ?」
そう言いながらソファに座る私の背後に来て、首に手を回してくる
そして静雄に見せつけるように、首に舌を這わせた
声が出てしまいそうになったけどすぐそこには静雄がいる
その事実に押さえつけられるように、小さな呻き声が出ただけで済んだ
はっきりと聞こえた舌打ちに、耳が痛い。
「悔しいなら、先攻で勝ってみろよ」
今までに聞いたことのない、臨也さんの低い声
怒った声。
理不尽な人……。
「じゃあ、1ヶ月シズちゃんの家で過ごせるだけの荷物持って行きなよ」
そう言いながらも臨也さんは、私の首筋に何度もキスを落ととす
抵抗できない自分が情けない。
「やめろ。」
突然ソファから立ち強引に私の腕を引き寄せる静雄
一瞬の出来事に驚いていると、いつの間にかすっぽりと彼の腕の中におさまっていた
怒りのせいか、心配になるくらい鼓動が早い
怖くなった。
私の心臓もドクドクと鼓動を鳴らす
数秒後。
ふわっと優しく、髪に触れる手の感触……
「……しず…お?」
見上げるとそこには、怒りのかけらも感じられない穏やかな表情
「はやくここから出る用意して来い。」
「うん……」
驚いた…
やっぱり、私に対しては怒ってないのかな
この家にある自分のカバンの中で一番大きいものを手に取り、そこに荷物を詰めていく
彼らは話をしていた
聞き取れたのは一部だったけど、それは1ヶ月間のルールのようなものだった
自分が彼氏である期間は何をしても良い
但し、そうでない期間は一切会わないこと
連絡も取らない
バイト先にも行かない
そういうルールだった
ああ、何だか憂鬱だな…