第17章 直接対決
「でもさ…、浮気なんて嫌でしょ」
「そりゃ…ね。」
「俺の方にもう一度戻ってくる?それとも…やっぱりシズちゃんと別れたくない?」
本音を打ち明けていいのかすごく迷った
胸の内を明かすことで誰が傷つくのか、誰の不安が和らぐのか…
考えれば考えるほど混乱してくる
私の右手は臨也さんの左手と繋がれていて、その手のあたたかさが苦しくなった
「正直言うと、選べない…かな」
やっぱり、いまはまだどちらかに決めるなんてことはできない
「でも、選ばないといけないよ」
その通りだ。
いずれはどちらかの方に行かないといけないから。
「俺の家で、3人で話そう」
「3人?静雄も?」
見上げたところにある臨也さんの表情は、これまで見たことないくらい穏やかだった
怒りも哀しみも切なさも帯びていない、純真無垢な微笑み
「静雄に、怒らないでね。あの人は何も悪くないから」
「分かってるよ。
俺たちは先に行こう。彼奴と一緒に移動するなんて気が引けるから、新宿に着いたら電話すればいい」
静雄の名前を出しても怒らない
何を考えているのか分からない…
人は何かを諦めると、途端に穏やかになると聞いたことがある
彼の表情に示されているのは、“諦め”…?
複雑な気持ちを隠しながら、私は手を引かれて賑やかな池袋の街に出た
もうすっかり暗くなった街
街灯に照らされた臨也さんはとても格好良かった
そうやってまた一つ、思い出が蘇っていった。