第17章 直接対決
その後も私たちは、電柱の陰に隠れて抱き合い、何度も唇を重ねた
いけないことと分かっているのに、私の腕は臨也さんの腰にまわる
そして互いに抱き寄せあった
静雄のことは何度も頭によぎる
当たり前だ
これは紛れもなく浮気なんだから。
浮気をしているという罪悪感
やっぱり2つの愛が欲しいという我儘な心
私はその間で揺らめいていた
もうすぐで地に足がつきそう。
でもその足は怪我をしていて、脆くて…
着地をすれば、私は確実に壊れてしまう
いつまでも迷いの中を彷徨っていたい
いつまでも、私が大好きな2人の愛を、受け止めていたい
片方の愛を選んでしまえば、もう片方は消えて無くなるんだろうな…
そして私を抱きしめてくれたその腕は、違う女に触れるんだろう
「ねえ、俺の家来なよ」
突然キスを止めてじっと見つめてくる紅い瞳
私は黙り込む
先程までは確かに臨也さんの家に荷物を引き取りに行こうとしてたけど…
今は訳が違う
この雰囲気で家に行ってしまえば、また臨也さんの家で寝食を共にすることになるだろう
それから抱かれることになると思う
それは全く構わないし、そうできたら……
でも今の私は“静雄の彼女”
それに静雄を嫌いになったわけじゃないし、寧ろ好きだし、一緒にいたいと思う
臨也さんはこの事を知っているのかな
何でもお見通しの臨也さんはそんなことまで分かっちゃうのかな…
分かって言ってるの…?
「あのね、怒らないで聞いてほしい」
「言ってごらん」
「昨日静雄に付き合ってって言われた」
「そんな気がしてたよ。
返事は?」
「付き合うことになった」
彼の表情を見るのが怖くて、私はずっと下を向いていた
「最低だね」
ああ、きっと彼は今、私の事を蔑むような目で見ているんだろうな
そう思わせる声色だった
「君が誰を好きだとか、誰のものになるとか関係ない
俺はが好きで俺のものにしたい
それだけだよ」
例えるならその声色の違いは…
悪魔と天使だった
怒っているのか怒っていないのか、よく分からない
臨也さんは、ニイ、と口元を緩めた
ああ、恐ろしい人だ。