第13章 “本当の”臨也さん
彼はここで何を考え、何をし、何に思いを巡らせるのだろうか。
「最低な仕事」
静雄さんの言葉を思い出す
あの頃はただただ臨也さんしか見えていなくて、彼を否定するような言葉が聞こえると耳を塞いだ
この席から見える大量のファイル
仕事の書類だとは聞いていた
じゃあ、その仕事の内容は…?
そこに手を伸ばしてはいけないんだろうと思っていた
駄目だと分かっていたけど、臨也さんの知らない部分があることが怖かった
臨也さんがどんな仕事をしているのか
それは本当に、「最低な仕事」なのか。
書棚の隅に一つだけ、書類があまり入っていない為かやけに浮いているファイルが目に止まった
まだ数分も座っていない椅子から立ち上がり、想像通りの軽さのファイルを取り出す
大きく深呼吸をし、ゆっくりと開いてみる