第13章 “本当の”臨也さん
静雄さんと会った日は、新宿までの道のりが長く感じられる
遠くて、空気も重くて、気怠い感じがする。
ぼーっとしている時間が多くて、たまに臨也さんと顔を合わせるところをイメージした
何を言えばいいんだろう?どんな顔をして会えばいいんだろう…って。
自然に振る舞うことができなくなる
不自然な笑顔を向けることしかできない
帰りたくなかった
エレベーターを降りて玄関の重い扉を開けると、珍しく人の気配がなかった
部屋の明かりを付けてみてもやっぱり誰もいない
壁掛けの時計に目をやると、針は丁度7時半を指していた
波江さんの勤務は既に終わっているらしい
今日はいつものように部屋へバッグを置きに行かず、臨也さんが普段座っている大きな椅子に腰掛けてみた