第11章 再び
臨也さんはとても真摯で、格好良くて、素直で。
たまに俺様的なところがあるけど可愛いところも持ち合わせていて…
沢山の時間を過ごしていくうちに、私がどうして彼に惹かれたのかを実感することができた
臨也さんと出会って2週間。
同時に、静雄さんと出会ってからも2週間ほど。
彼を思い出すことは全くなかったし、正直気に留めようとも思わなかった
あの日、…臨也さんと関わるなと言われた日。
好意を持ってドキドキしたのはあの日だけだった
まるで臨也さんが、自分以外への余計な感情なんて消してしまえ。って…
そう言って、本当に私の心の中を操っているみたいに。
静雄さんを思い出すきっかけとなったのは単純で、彼と再会したことだった
バイト帰り、いつもの道を歩いていた時…
街で噂の…臨也さんが教えてくれた例の“黒バイク”が私の横を通り過ぎ、何とも言えない不思議な気持ちに駆られていた時。
じっと道路側を向いて立ち尽くす私の背後から、男性の深い声がした
歩道の街灯が男性の影を作り出す
「お前…」という声に聞き覚えがあるような、ないような…
周りに誰もいなくて怖くなったりして。
もう夜も遅いから、これから物騒な事件に巻き込まれてしまいそうな気もして…
振り向くか否か迷っていると、男性から再び声がかかる
「忘れちまったか…?ずっと謝ろうと思ってたけど、忘れてんなら無理だな」
そう言って、どこか切なそうに笑う声の主。
私と、この池袋の街でいざこざがあった男性…
そんなの1人しかいない。
「静雄さん…」
私は振り向かない。
今振り向いてしまえば、何かが崩れる気がした
「謝ることなんてないです」
「謝るくらい俺の勝手だろうが…」
私は返事をしない。
何を言うのが正しいのかも分からないし、余計な一言で彼を傷つけることになりかねない。
「なあ、幸せにしてもらえよ。」
聞きたくなかった
すごく切なくなった
哀しくなった
どうしてだろう?
彼がどんな表情をしているのか知りたくなった。
安堵したような穏やかな声だったけど、
彼の端正な顔立ちは今、哀愁を帯びているような気がした。