第5章 関わるな
多分、静雄さんはいい人
力が強くて、怒ると怖くて、臨也さんと仲が悪いだけ
普通にしてたらいい人なんだと思う
でも、
「関わるな」
そう言われても、素直には受け入れられない
静雄さんには散々嫌なことをしてきたかもしれないけど、
私は何もされてない
でも、あの冷たい目が脳裏に浮かぶ
それに、静雄さんをナイフで切りつけた、って…
どうしてそんなことするんだろう…
情報屋は最悪って、何…?
悪いことしてるのかな…
臨也さんって、どういう人なの…
やっぱり、一目惚れだけじゃ上手くいかないんだ
でも、容姿だけじゃない
私に優しくしてくれた
普通にしてたら、裏があるように見えない…
しばらく黙り込んだ
静雄さんは小さな声で、
「傷つけるつもりは無かったんだ、ごめんな」
と言った
その言葉にまた惑わされる
いい人が言う言葉は信じたほうがいい。
そんなこと分かってる…
「静雄さん…ごめんなさい、私もう戻りますね」
今私に言える言葉はそれしかなかった。
「おう、ごめんな…」
「静雄さんが謝ることないです。」
彼は、仕事用に着用している私のエプロンを見て
「紙とペン、あるか?」
と聞いた
私は言われるがままにいつも使っているものを差し出した
返ってきたメモに書いてあったのは、11ケタの数字
「俺の電話番号。何か辛いことされたらかけてこい」
なんて優しい人なんだろう。
それまでとは違う感情が出てきた
静雄さんが素敵。
この人のところなら、傷つくことはないんだろうな。
心が傾きそうになるな…
ごめんね、臨也さん
臨也さんのことちょっと信じられなくなったし、
静雄さんをいい人だと思っちゃった
ごめん。