第28章 《 side S 》 時間の使い方
朝、カーテンレールが大きな音を立てて目が覚めた
窓際で嬉しそうに外を見る静雄
「晴れてんなぁ」
「んむ………」
「おう、起きたか」
漫画みたいな例えをしてしまうと、今の彼は太陽のように眩しい
白シャツが外から差し込む光に照らされてる
ベッドから身体を起こして伸びをすると、静雄はわたしが寝ているベッドに腰掛けてまじまじと顔を見つめてきた
「……なに…?」
「昨日言ってたやつ」
昨日……昨日………
昨日、気まずくなったことは覚えてるんだけど……
まさかわたし今から怒られる…?
「祭りの話な」
「あ、うん……どうかした?」
わたしがほっとしながらそう言うと、ケータイを開いてそれをわたしに向ける
【Tokyoイベントガイド】
【6月上旬のまつり一覧】
【1件hit!】
【【 6月3、4日 来神明神 青風まつり 】】
「6月3日……」
確認するように声に出してみる
6月3日
それは私たちが一緒に居れる最後の日
「俺と行ってくれっか?」
どこか不安気な表情をした静雄
わたしの顔を覗き込んで問いかけてくる
いつの間に探してくれたんだろう
昨日の夜に祭りの話をして、わたしが朝起きる時には見つかっていて
一緒に寝たはずなのに
ああそうか、昨日はわたしが先に寝ちゃったんだ
頭を撫でられながらウトウトした記憶がある
その後探したの…?
貴方はどれだけ、わたしとの時間を大切にしてくれようとしているの
祭りに行きたいなんてわたしのワガママなのに
「勿論だよ……静雄と行きたい」
「そうか、よかった」
「ありがとう」
ありがとうと言うと静雄はいつも優しい顔になる
彼はニコッと微笑んで、わたしまでニコニコしてしまう
ああ、好きだ
この時間が愛おしくて幸せで、ずっと続けばいいのになって思う
「静雄」
「ん?」
そっと、ベッドの端に座る後ろ姿を抱きしめる
「好き」
「っ……んだよ急に……」
ツンツンした言葉だけどその口調はとても柔らかくて
照れ隠しな彼が可愛くて困る
「…なあ、チューしていいか?」
ほら
やっぱり照れ隠しだったでしょ
正面を向いて、両肩に手を置いて、ゆっくり顔を近づける
ぎこちないキス
ああ、本当に
大好きだ