第27章 《 side S 》セルティさんと新羅さん
「おはよ。」
そうやって目をしょぼしょぼさせる静雄の頬をムニムニしてみると、「朝?!」と言いながら勢いよく起き上がった
「午後4時だよ」
「4時……」
数回まばたきをして丁寧にタオルケットを畳む
「居座っちまってごめんな」
「いいんだよ。ちゃんとも話せて楽しかったしさ」
静雄は目を閉じたまま眠そうに頷く
あれからセルティさんは運び屋の仕事に出かけてしまって、岸谷先生とじっくりお話しする時間ができた
静雄の小学生時代の話、解剖してみたいとかそういう類の話、セルティさんの魅力についての話、羽島幽平と聖辺ルリが熱愛報道後初の共演作となるドラマの話…
たまに静雄が寝息を立てたりするから、それで少し笑ったりもした
「あんなに金髪で長身なのに、今だけはまるで子供みたいだ」なんて言われてたり。
いつまでも眠そうな静雄を見て、岸谷先生は来客用のグラスを用意し始めた
冷蔵庫を開くためにこちらに背を向ける
その隙を見て、「目覚めろ!!」と言わんばかりのキス
すぐに離れるつもりだった。
軽く触れるだけのつもりだったのに、静雄はわたしの後頭部を抑えて引き寄せ、また口づけ。
寝ぼけてると思ってたけど、それにしては素晴らしいくらい咄嗟の判断だ
いやいや、バレる…バレるよ…
「いやぁ〜今日も熱いね!!気温的にも絵面的にもね!!!」
キスをされたまま横目で岸谷先生を見ると、まだ私たちに背を向けてる
ぽんぽんと強目に静雄の肩を叩くと、大人しく離れて満足げに笑った
「もういいかい」
「おう」
「もうばか!!ばか!!」
「やれやれ、馬鹿はどっちだか…」
静雄は満足気に牛乳を受け取ってそれを喉に流し込んだ
「静雄くん、給食で出た牛乳を飲んでくれってクラスメイトに頼まれて怒ったことがあるんだよね」
「どうして怒ったの?」
「…そりゃ………牛乳飲んだら強くなれるってのに、飲まねぇとかよ…」
〔静雄くんが牛乳についてどうして熱い感情を持ってるのか、ちょっとした噂を小耳に挟んだことがあるんだけどね
聞くかい?〕
わたしも、もっと優しい人にならなきゃなぁ。