第3章 赤い瞳
の涙はほんの少しだった
あまりにも少しだったから、
「目が痛かっただけ」とも言っていた
取り敢えず風呂に入って部屋でゆっくり休むように言っておく
その間俺は意味もなくパソコンを起動させる
特に理由はなかった
仕事をするわけでもない
チャットルームに行く気にもなれない
調子が狂う…
この時間帯は何をしていたんだろう
あいつ家に呼んでから、
あいつを意識し始めてから、
あいつと色々あってから…
いつも通りにいかない
しばらく何もせず、
ディスプレイを眺め、キーボードに手を置いていた
「臨也さん」
少しだけ体がビクついた
意識している人の声には過剰反応してしまうものだ
風呂上がりで髪を濡らしたが近寄ってくる
さっき俺が渡したシャツを着ていて、
どこからか出してきた俺の短パンを履いていた
「下、履かなくていいんじゃないの?」
俺はパソコンをシャットダウンしながら言う
彼女は目を丸くして顔を赤らめながら、
やっぱり変態…と言った
可愛い。
「今日はもう寝なよ」
そう言うと軽く頷いて、
「おやすみなさい」
と、素敵な笑顔を向けてきた。
「おやすみ」。
寝室のドアが閉まる音が聞こえたのを確認し、
コートを羽織る
そして、に気づかれないように、
静かに家を出た
しばらく夜の新宿を歩き回る
まだ少し冷たい春の風が体に染みた
携帯も見ず、ただひたすら歩いた
何時間外に居たんだろう
家に帰って寝室の扉をゆっくり開けた
は寝息を立ててぐっすり寝ていた
やっぱり彼女を愛おしいと思う気持ちは変わらない
涙を流していた顔を思い出す
でも今は幸せそうに寝ている
それだけで嬉しくなった
「俺は、君が好きなのかもしれないな」
ベッドの端に座り、聞こえるか聞こえないか、
かなり際どいボリュームで言う
愛おしかった
頬に伝う涙を思い出してしまう
頬に、軽く口づけた
調子が狂う…
こいつを前にすると、自分でもわけのわからない行動ばかりしてしまう
俺は今、自分に素直になろうとしているんだろう
この時の目が覚めていたことを彼はまだ知らない
そしてそのままはベッドで、
臨也はリビングルームのソファで眠った