第2章 関係
そう言うと少女はリヴァイの顔を見つめ小さく呟いた。
「ユカ」
「それがお前の名前か。
苗字はあるのか?」
ユカと答えた目の前の少女を詳しく調べる為には苗字も重要な情報の1つになる。
するとユカは少しまた俯きながらも今度は今までで一番はっきりとした声で答えた。
「アッカーマン」
それを聞きリヴァイは驚いて思わず目を見開いた。
『アッカーマン』という苗字は特に珍しい苗字では無いが、地下街から来たとなると話は違ってくる。
「それは…本当なのか?」
そう尋ねると頷かれ、リヴァイはユカを見つめたまま考え込んだ。
そして1つ思いついた事を聞いてみた。
「兄弟はいるのか?」
「…うん」
「そいつの顔は分かるか?」
その言葉にユカは既に空になっていたカップを置いてリヴァイを見つめながらはっきりと答えた。
「あなた」
「えっ…?」
思いも寄らない言葉に一瞬頭の中が白くなる。
リヴァイ自身、自分に兄弟などいないが、今目の前に座っているユカははっきりと自分の事を兄弟だと言った。
リヴァイの思考が追いついていないでいるとユカは今までとは違い力強く話し始めた。
「私のお母さんが言ってた。
私には兄がいる。
その人は幼い頃に家を飛び出してそれ以来戻って来なかった。
戻って来なかったのは自分のせいでその人はゴロツキになった。
そしてその兄の名前は『リヴァイ』って…
だから私の兄はあなた」
ユカが話した内容に眩暈がしてきた。
リヴァイが地下街でゴロツキになった理由は正直覚えていないし、両親の顔も殆ど覚えていない。
ましてや苗字はあるが他人に教えた事など一切無かった。
リヴァイは立ち上がり、椅子に座ったままのユカの腕を引っ張り部屋を出てエルヴィンの執務室へと向かった。
このまま1人…いや2人であの部屋に居る事に耐えられない。
執務室に入るとエルヴィンの姿は無く、その代わりハンジがソファーに座っていた。
「ハンジ、エルヴィンは何処だ」
そう話しかけると驚いた様にソファーから立ち上がってリヴァイを見た。
「エルヴィンなら資料室に行ったけど…何か分かったの?」
まるで巨人の実験をする時の様な目をしながら食い入る様に聞いてくるハンジに嫌気が差す。