第1章 誰
「親も家も無い…
もしかして地下街から来たのかもね」
ソファーに少女を座らせてどうするべきか考えているとハンジが言った。
「その可能性はあるが、地下街に居たとしたらどうやって外に出てきたって言うんだい?」
「確かにそうだけど…あっ!
誘拐って線は?」
「誘拐って…地下街の奴を誰が好んでするってんだ?
人身売買ならあり得るかもしれねぇが」
「それだ!」
リヴァイの言葉に突然大声を出した為、耳がキンキンする。
「ねぇ、誰かに連れて来られたの?」
少女は言葉は出さないものの、首を横に振った。
「違うのか…じゃあ何処から来たのか教えてくれないかな?」
ハンジは優しく聞いたが少女はハンジを見つめたまま何も話そうとしない。
その横でエルヴィンは困っていた。
「これは困ったね。
でも、この子を見ていて思ったんだが…リヴァイに似ていないかい?」
それを聞いてハンジは少女を眺めた。
「本当だ。
言われてみれば目つきが似てる…」
「それについては街の店主にも言われた」
そう答えるとエルヴィンとハンジは一斉にこちらを向いてきた。
「「やっぱ隠し子…」」
「だから違うって言ってるだろ!」
兵舎に連れて来てから何度目かの「隠し子」という言葉に嫌気が差していると、少女の横に一緒に座っていたミケが口を開いた。
「さっきから思っていたんだが…この子の匂い…リヴァイに似ている」
「何だと…!?」
嗅覚が異常に優れているミケにしか分からない匂いにまで似ていると言われ、リヴァイの心は挫けそうになっていた。
「てめぇら…俺に子供が居ると思うか?」
リヴァイは呆れながら聞くと3人共が同じ事を言ってきた。
「まぁ、居ても不思議じゃないと思うけど?」
「私もハンジと同じ意見だね」
「俺もだ」
「・・・」
返す言葉が見つからず、徐々に苛立ちが芽生えてくる。
「俺がそんな事してねぇ事ぐらい分かってるだろ」
「さぁそれはどうなんだろうね。
リヴァイだってもういい歳だし…っ痛!」
ハンジの言葉を遮る様にリヴァイは背中を蹴りあげた。
「とりあえずだ!
俺には子供は居ない!
とにかく俺の事はいいから、こいつをどうするか決めろ」
エルヴィンを睨みながら言うとニッコリと微笑みながらも何か企んでいる様な声で話した。
「暫くリヴァイに任せよう」