第1章 誰
「何で俺なんだよ!」
「だって君がここに連れてきたんじゃないか。
この件はこっちで調べておくからリヴァイはこの子の面倒を見てくれ」
思いも寄らなかったエルヴィンの言葉に愕然としているとハンジが明るい声で言った。
「ねぇ、私が面倒見ようか?」
すると少女は急に立ち上がりリヴァイの元へ行き、後ろに隠れた。
「どうもこの子はリヴァイが好きみたいだね」
「何で!?
私のほうが絶対きちんと面倒見れる筈!」
「…嫌」
ハンジの言葉を聞いてリヴァイの後ろに隠れている少女は小さい声で拒絶すると、リヴァイ以外の3人は驚いて少女のほうへと視線を向けた。
「い…今…喋った?」
「驚く事ねぇだろ」
「だって、この子ここに来てから一言も喋らなかったんだよ?」
「確かにそうだが…よく考えろ。
こいつに親や家が無いのを知ったのは何でかって事を」
そう言われてハンジは頭をガシガシと掻きながら何かを考えている様だった。
「とりあえず今日はこの辺にしておこう。
そういえば部屋はどうするんだい?
一応空き部屋はあるんだが…」
エルヴィンがそう言うと少女はリヴァイの袖を強く握るのを見てため息をついた。
「この調子じゃリヴァイから離れる気は無いみたいだね」
「…ちょっと待て。
まさかこいつと一緒の部屋で過ごせって言うのか?」
「それが希望みたいだよ?」
リヴァイはチラッと少女を見ると表情こそは無いが袖を離そうとはしない。
その様子にリヴァイもまたため息をついて言った。
「分かった。
とりあえずこいつについて分かった事があったら言う。
何かヒントになる物があるかもしれない」
「身長から考えると12歳ぐらいだから手は出しちゃ駄目だからね!」
ハンジがからかう様に言ってきたが無視してリヴァイは少女を連れて執務室を出た。
2人が居なくなった後、3人は考え込んだ。
「あの子を見ていて少し気になった事があるんだけど…」
「君も気付いたのか」
ハンジとエルヴィンが話している横でミケは黙ったままでいた。
「まさかとは思うけど…あの子、地下街から来たのは間違いないと思う。
中々話さないのもそれだったら辻褄が合うよ」
ハンジの言葉にエルヴィンは頷いた。
「私もそう思う。
あれだと人身売買されたのに間違いない。
それから逃げた…という事か」