第1章 誰
「そんなに似ているか?」
リヴァイはしゃがみこみ少女の顔を至近距離で眺めるが、やはり分からない。
すると機転を効かせた店主は奥から鏡を持ってきてリヴァイに差し出してきた。
それを受け取り、自分の顔を眺めてから少女の顔を眺めると、何か懐かしい気持ちになった。
「確かに似ている様にも思えるが…」
そこまで言って鏡を返すと少女に問い掛けた。
「お前、親はいねぇのか?」
すると少女は小さく頷いた。
それを確認してリヴァイは立ち上がると店主に向かって言った。
「この街で一番長く商売をしているのに知らないんだったら、もしかしたら地下街かもしれねぇな」
「確かにそうかもしれませんが…
兵長も分かってらっしゃるでしょう?」
「ああ…もしそうなら尚更こいつをこのままにしておく訳にはいけねぇな」
そう言ってリヴァイは再び少女の手を握り店主に礼を言うと店を出て兵舎のほうへと向かった。
「お前、地下街から来たのか?」
歩きながら聞くが案の定返事は無い。
唯一分かっている事は家どころか親も居ないという事だけだ。
無言のまま歩き続け、そして兵舎に着くと敷地内に居た兵士達が驚いた様子で目を見開きリヴァイを見てきた。
「へ…兵長…その子は…?」
「俺も分からん。
エルヴィンの所に連れて行く」
それだけ言って兵舎の中に入り、そのままエルヴィンの執務室へ行った。
いつもの如くノックをせずに入るとエルヴィンの目の前でハンジが発狂していた。
「だから何で捕獲しないの!」
「この前したじゃないか」
「でもあの子達は直ぐに殺されたんだよ!?
おかげで研究が出来ないじゃない!」
「そう言われても都合という物があるのは君も分かっているだろう?
あ、リヴァイおかえ…って…その子は誰だい?」
エルヴィンが驚きながら聞いているのを見て、ハンジは扉の方へと視線を向けるとさっきまで発狂していたとは思えない程固まった。
「俺にも分からねぇ。
とりあえず今分かっている事は、こいつには家も親も何も無いという事だけだ」
そう言うと2人揃ってリヴァイと少女を交互に見つめてきた。
「あんた…まさか…」
ハンジは明らかに動揺した声で言った。
「…隠し子?」
「はっ!?」
リヴァイはハンジの言葉に驚いて思わず声を上げ、そしてもう1人の人物は笑っていた。