第1章 誰
「どうした。
何か俺に用事でもあるのか?」
そう聞くと更に力をこめながら引っ張られる。
リヴァイは小さくため息をつくと少女を同じ目線になるように屈みこんで言った。
「お前、1人か?」
すると少女は小さく頷いた。
それを見て少しめんどくさく感じながらも、まだ掴まれている裾から手を離しそのまま握った。
「とりあえず街に行くぞ」
宛てがある訳では無いがここに1人残すよりはマシだ。
そして少女の手を握ったまま元来た道へと歩こうとした時、小さい呟き声が聞こえた。
「…街は嫌」
その言葉にリヴァイは驚きながらも感情を表に出さずに答えた。
「ここに居ても殆ど誰も来ない。
とりあえず街に行った方が良い」
諭すようにゆっくり言うと渋々とついてきた。
街に行くまで一言も話さなかったが、少女の手を握っていると本当に嫌なのだというのが伝わってくる。
中心部に着くとリヴァイは振り向いて言った。
「お前は何処に住んでるんだ?」
話すのが苦手なのか、それとも人見知りなのか、やはり返答は無い。
その様子に少し苛立ちながらも一番近くにあった店に少女を連れて入った。
「いらっしゃい!
ってリヴァイ兵士長、どうなされたんですか!?」
店主がリヴァイの横に立って居る少女を見て驚きながら聞いてきた。
「何か迷子みたいなんだが、こいつの事知っているか?」
「いえ、初めて見る子ですね。
長年ずっとここで商売していますが…ん?」
話の途中で店主が少女を見て何か思ったのか、目を見開きそのまま固まった。
「どうした」
「い…いえ…その…」
店主は気まずそうにリヴァイの様子を伺いながら口篭っている。
「その子…まさか…」
「だから何だ」
静かに、そして少し棘がある目線を店主に向けながら言うと、困った様に話した。
「いえ…その子、兵士長によく似ているなぁと…」
「…俺に?」
そう言われてリヴァイは改めて少女を見たが似ているとは思えない。
「まぁご自身と似ているなんて言われても本人は分からないとは思いますが、私が見る限り特徴的な部分が似ていますよ」
「特徴的?」
リヴァイは少女から目線を離さずに眺めたが、どうにも分からない。
「簡単で良い。
何処が似ているんだ」
すると店主は苦笑いしながら答えた。
「…目…です」