第3章 技術
「「うわっ!」」
リヴァイとエルヴィンは揃って大声を出しながら驚いた。
ハンジの目の前にある模造と比べたらまだマシな方だが、それでも十分すぎる程ボロボロ状態だった。
「これは…ユカがしたのかい?」
なるべく冷静を装いつつ問いかけるエルヴィンはミケに尋ねると模造を地面に置きながら話した。
「ああ。
ここまで一瞬でボロボロにするのは初めて見た」
ボロボロ…厳密に言えば粉々になっている模造2つを見つめながらリヴァイはユカに話しかけた。
「これはうなじだけ切ったので構わないんだが…」
「巨人はお兄ちゃんの敵。
だから粉々にしないと駄目」
そう言うユカを4人は凝視した。
とても12歳の子供が言う言葉とは思えない。
「…模造もそうだが、もう1つ問題がある」
リヴァイはユカの方へ歩み寄り、ガスの残量の確認をする。
全力で追いかけても姿が見えない程遠くまで行ったという事はガスを吹かせ過ぎている可能性がある。
そう思ってガスの残量の確認をすると…
「嘘だろ…」
思わず絶句するリヴァイの様子を見て3人は不思議そうにリヴァイを見た。
「殆ど使っていない…」
「「何だって!?」」
またしても大声で驚く3人を横目で見ながらリヴァイはユカに聞いた。
「お前、ガスを殆ど使っていないのか?」
「うん。
だって、必要ないから」
「必要ない?」
「地下街ではガスを使わずに移動してたよ?」
ユカの言葉にリヴァイを含めた4人は思わず固まった。
ガスを使わずに立体機動を使う事はほぼ不可能な筈だ。
アンカーを扱うには必然的にガスを使わなければならない。
色々考えているとハンジが突然口を開いた。
「そういえばさっきユカの動きを見て思ったんだけど…」
ハンジは考え込みながらも少しずつ話し始めた。
「確かにガスを思いっきり吹かしている感じはしなかった。
むしろ、最低限にしかアンカーを出さずに、この模造を粉々にする時はアンカーは引っ込んでて、その反動で模造に近付いて一瞬で粉々…」
「じゃあ、模造を粉々にしている時はただ宙に浮いてただけって事か?
しかも一瞬でか?」
「うん」
(ハンジが嘘をつく筈が無い。
だが、自殺行為に等しいやり方だが…地下街ではガスを使っていない…?)