第2章 想いを馳せて
結局、激しい戦にわざわざ紛れる必要はないと、屯所での待機を命じられた千鶴
殆どの幹部を出払っている中で残るというのも不安だが、それ以上に足を引っ張る訳にはいかないのだ。
近藤が不在の今、隊の指揮を任された土方は敵の本陣である御香宮神社への進軍を決めた。
「新選組副長、土方歳三!」
目を瞑れば、今にも聞こえてきそうな勇ましい名乗り。
その声に、姿に、何度助けられた事だろうか。
その声に、姿に、何度甘えたのだろうか。
一人きりの部屋。外から聞こえる発泡の音も刀のぶつかる金属音も、全て塞がれたその部屋の片隅で、どうしようもなく負の感情が沸き立つ。
最初こそ怖かったものの、認められて、守られて。
不器用だけど気遣いが嬉しかった。
そんな土方にどこか甘えていた様な、そんな気がしたのだ。
今回の留守番も、結局は千鶴の身を案じての判断であったはず。戦えなくとも出来ることはあるはずなのだから。
千鶴は自問自答を繰り返しながら決断したのだ。
土方が戻ってきたら、自分にも出来る事を手伝わせて欲しいと、伝えるのだ。
思いを馳せて、今はこの場で祈っている。