第2章 想いを馳せて
千鶴は屯所で一人指示を待ちながら、先日の一件を思い出す。
________「近藤さんを撃ったのは君達か」
「沖田さん⁉︎その姿は…⁉︎」
御陵衛士の残党が奉行所付近で嘲笑う様に銃声を響かせてきた。
見慣れないその姿に息を飲んだあの日。
病気なんてそっちのけで血塗れの刀を握る手は微動する事なく。
誰もいなくなったその場所で、彼は私にも敵に見せる鋭い目付きをしていた。
どこかで恐怖を引きずり出す様な強引な感情を覚えた。
今も思い出せば震えてしまう様な出来事だった。
でも決して目をそらせなかった。
__________「危ない!!」
そう言って千鶴の前に立つ彼の背中はいつもより大きく感じて。頼もしくて。
しかし脆くて危うい。
銃弾を受けて、地面と隣り合わせになった。
どくどくと止まらない流血を遮る事は出来なくて。
ごめんなさい。ごめんなさいと心の中で何度も懺悔の言葉を繰り返した。
「沖田…さん。」
最後にその名前を呟いたのは、どうしてなのだろう。