第4章 雨降って虹
「新選組め…いい気になりおって。近頃また勢力を上げたのではないか?」
「全くもって同感だ。小賢しい連中よ。嬢ちゃんもそう思うであろう?」
「私ですか?うーんそうですね…私は正直どちらの世がいいのかわからないのですが、確かに最近の新選組は怖いですよ。親が尊皇派の思想に近いから、という理由もあると思うんですが、何より市中で見境なく刀を抜く姿を見かけまして…」
浪士達の愚痴を頭の中に詰めながら、凛もまた、新選組に良い印象を持っていないと隠す事なく答える。
決して凛が特別な考えを持っている訳でもなく、むしろこれは市中で行き交う新選組の評判の代表とも取れるものだった。
「斬られる様な覚えはないのですが、どうしても、会ってしまうと斬られるのではないか…とヒヤヒヤします。」
「全くだなぁ。関係ない嬢ちゃんもそう思うんだもんなぁ。」
「お前達、仕事の邪魔だ。すまないね、凛さん。品の無い連中ばかりで対応も面倒だろう。律儀に答える必要は無いんだよ。」
不意に後ろから武市の声。ここの浪士を取り仕切る彼の一言で、新選組の評判から一転、勤王という単語がちらほらと覗き始める。
「いえいえ、お仕事ですから。今日はもうお帰りですか?」
「君、今日は随分と遅い時間まで働いている様だが…」
「私ですか?ちょっと今日は人手が足りなかったもので…。でもそろそろだと思います。それがどうかしましたか?」
「以蔵。」
たったそれだけ。名前を呼べば音もなく現れる岡田の姿。
武市はその姿を目で捉える事すらなく、用件だけを唱える。
「凛さんを家まで無事に送り届けなさい。」