第3章 風が招く出会い
「駄目です。ありません」
「ココナ、採取した薬草の中には?」
木々はココナにも問うが、ココナは申し訳なさそうに首を横に振る。
「ごめんなさい。解毒剤に必要な薬草は、採取した物と庭の薬草の中にはありません」
「そんな…」
木々の目には、苦しそうに息をするゼンが映る。
薬剤師の白雪と、薬草に詳しいココナが言うのだ。
本当に無いのだろう。
すると玄関の扉が開き、誰かが家に入ってきた。
すぐにミツヒデと木々が反応し、剣の柄を握る。
「!誰だ」
ミツヒデが叫ぶと、黒髪の男が立っていた。
男は家の中をぐるりと見回し、倒れたゼンを目にとめる。
「---遣いの者です。…おやまあ、口にされたのは、白雪どのではなかったか。うーん…。まあ、いいか…?」
ぶつぶつ言いながら1人で納得している男に、白雪は見覚えがあることに気付く。
「---…あなた…この前うちへ来た……。どういう事…?」
「----白雪どの。そこにあるのは、毒の林檎です」
「……あなたが用意した物なんですか?」
知り合いらしいやり取りに、ココナは剣呑の眼差しを男に向ける。
だが、男は視線をココナに少し向けただけですぐに白雪を見た。
「ご心配なく。解毒の薬はある方が持っています。…ご同行、願えますね?」
嫌とは言わせない雰囲気で白雪に言った。
++++++
男が来て少し時間が経つが、そこに男の姿は無い。
もちろん白雪の姿も…。
責任を感じた白雪は皆がとめるも、解毒剤をもらう為…ある方に会いに行ったのだ。
タンバルンの第一王子に……。
毒により倒れたゼンはミツヒデの手により、ソファーに寝かされていた。
診察したココナはゼンの額に濡らしたタオルを置く。
「…ゼンの容体(ようだい)は?」
そばに控えていたミツヒデと木々。
ミツヒデの問いに、ココナは難しい顔をする。