第3章 風が招く出会い
まさかの隣国の第一王子。
ゼンは驚いて怪我をしている方の手で、勢いよくテーブルを叩いた。
「!ラジとかいうバカ王子か!」
怪我をしていることを忘れてのこと。
案の定…言葉にできないほどの痛みに襲われた。
「え!?ラジ王子って、あの…噂の馬鹿王子?…ゼン…なにやってるの?」
「さすが…。隣国にまでもとどろくバカ王子…」
悶えるゼンに呆れつつ、向かいから怪我をしている手をとり撫でるココナ。
故郷の王子の名が、まさか隣国にまでバカ王子と伝わっているのに白雪は微妙な気持ちになった。
ココナに撫でられてだいぶ落ち着いた痛みに息を整える。
「ありがとう、ココナ」
「うん」
ココナはソファーに座り直す。
「そのラジ王子から白雪は逃げてきたんだ?」
「そうなんだよ」
「…相手が相手、ね。まあ、国境通過の記録から何から調べさせたのかもな。一度欲しいと思ったものは、自分の所有物に数えるんだろ。さすがだな」
「何がさすがなの?白雪は物じゃないんだよ?」
「それを、この馬鹿王子には通じないと思うぞ」
「だからって…」
酷い…、と顔をふせるココナ。
白雪は林檎を見つめ、「………籠に入れるくらいわけないか…」と林檎を1つとる。
「え……」
「白雪?」
かすかに聞こえた白雪の声にゼンとココナが顔をあげる。
何も考えてないような表情から、どこか諦めた表情に変わり。
「なんちゃって」
初めて見た白雪の心に、2人は何とも言えない感情を抱いた。