第3章 風が招く出会い
「あ、家出るとき切り損ねたんだ。きっと。ごめんゼン、切っちゃってくれないかな。とれない」
「は?」
「え?」
何を言ってるんだ?という顔をする2人に、白雪は「同じ反応…」と小さく呟く。
しかしゼンが、ニヤと何かを思い付いた笑みをし、大袈裟な素振りで断った。
「いやいや!女の髪を切るなんて、俺にはとても!
長い髪を捨てたのは、家を出たのと何か関係が?わけを聞かせて貰えれば、手助けもできるんだが……」
「……ゼン。わざとらしいよ」
「………あなたって人は…」
呆れてものも言えない。
ココナと白雪にそんな空気が流れた。
ひっかかった髪をゼンに切ってもらったので、仕方なく白雪は真実の部分を隠し、本当のことは言わずゼンとココナに家を出た理由を話した。
それを聞いたココナは言葉をなくし、ゼンは大声をあげていた。
「金持ちの息子に愛妾になるよう言われたぁ!!?」
「色町で言葉を覚え、金貨を食べて育ったと有名なご子息でね。赤い髪を珍しがって、自分のそばに置きたくなったって話だったよ」
丸太に座っていた白雪とココナ。
白雪は苦笑いを浮かべ立ち上がる。
叫んだあとゼンも絶句していたが、ココナが気まずそうに口を開く。
「……凄い人がいるんだね。でも酷い。白雪の髪綺麗なのに…」
「…ありがとう。でも、相手にしたら果物屋で林檎を買うようなものだったんじゃないかな」
「しら……」
「---だから」
白雪と呼ぼうとしたゼンの声を、背を向けていた白雪が振り返る。