第2章 奏で始める
「…っとそうだ、ココナ」
「はい?」
「お前、殿下って呼ぶのやめろって何回言わせるんだ。敬語も」
「え…?でも、でも…」
「必要な時以外は無しだ。いいな」
おろおろするココナの頭を、座ったまま手を伸ばし撫でて言い聞かせるゼン。
渋っていたが真剣な目にゆっくり頷いた。
「わかった。ゼン」
「ん」
箱に蓋をして包み直すココナは、ふと気になった事を聞いた。
「そういえばゼン、今日からどこか行くって言ってなかった?」
「……あぁ、もう少ししたら出掛ける」
注文の品物が入った包みを木々が受け取ると、初めて聞いたとミツヒデが声をあげる。
「え?そうなのか?聞いてないぞ、ゼン」
「うん、初耳。ココナが知ってたってことは、前から決まってたってことだね」
「え?え?ミツヒデさんも木々さんも、知らなかったんですか?ご、ごめんなさい」
「あー、もー!落ち着け!」
二人から責められ、幼馴染みは気にしてる。
とりあえず説明するからと、三人を宥める。
手にした水を一口飲むと、ゼンは三人に向き直る。
「確かに前から決めていたことだ。城の外の散策を考えていた。
予定では今日出て、明後日には戻るはずで……というか、ミツヒデには話していたはずだが…?」
「え、そうだった…か?」
ゼンと木々からジト目で見られ苦笑いをするミツヒデに、「今月の初めぐらいに言ったはずだ」とゼンが言う。
少し考え心当たりがあるらしく、ミツヒデは力なく。
「………悪い」
謝った。