第8章 乱藤四郎
どこから取り出したのか、乱は自分の携帯端末から一枚の画像を呼び出した。画面には山盛りのサツマイモが入ったカゴを持つ五人の男性が笑っていた。
「コレみーんなねぇねの同僚なんだよねー。左から三日月さん、鶴丸さん、いち兄、燭台切さん、長谷部さん。真ん中のいち兄がボクの一番上のお兄さん。この人達みんなねぇねの事狙ってるけど、ねぇねはいち兄のお嫁さんになるんだから」
携帯端末の画面からでもわかる五人のイケメンぶりに男達は口を噤んだ。一方審神者は乱から告げられた衝撃の事実に呆然としている。誰が誰を狙っているって……?て言うか乱さん、誰が誰のお嫁さんになるって?と、思考が完全に停止していた。
一瞬、静寂が訪れる。そしてその隙を伺っていたかのように、警備員と思しき係員が話しかけてきた。
「こんにちは〜!何かお困りでしたか?」
ニコニコと笑顔でありながらどこか有無を言わさぬ雰囲気を纏う係員の登場に、男達は慌てふためいた。
「あ、いやその、何でもないです!なぁ‼︎」
「えと、うん、その、俺達もう行きますんで!!!」
急いでその場を離れようとする男達の足をもう一度ギリ、と踏んで、乱は微笑んで呟いた。
「もう二度と関わるな」
そして審神者の方を向き、心配そうに声をかける。
「ねぇね、パレード見たらご飯食べて帰ろう?」
「あ、うん、そうだね…」
未だ呆然としている審神者の手を取り、乱は元いた場所へと足を向けた。