第8章 乱藤四郎
「ねぇねってばおっそーい‼︎ボク、待ちくたびれちゃったよ」
審神者と男達の間を遮るように乱が立ちはだかっていた。いつの間に履き替えたのか、さっきまで履いていたドレス付属の低いヒール靴ではなく元々履いて来た高いヒール靴の踵で男達の足をしっかりと踏んでいる。
「みい!危ないからどきなさい‼︎」
「ってぇーっっ‼︎何すん…って、いててたただだだだだだいだいいだいいてぇって!!!」
「いってぇ…もしかして君妹ちゃん?っていだだだだだだだっっ!!!」
踵に重心を移動して、乱はゆっくりと振り向いた。満面の笑みに見えるが目は少しも笑っていない。
「あんたたち、何?ねぇねに何の用?」
戦場も斯くやとばかりの殺気を男達にだけわかるように向けて、乱はドレスを纏うその容色に似合わぬ低い声で威嚇した。尚、足は踏んだままである。
「あの、いやその、俺達お姉さんにぶつかっちゃったからお詫びにっていだだだだだだだっっ‼︎」
「穴場スポット知ってるし一緒にパレードどうかなぁーーっていででででいでいでいてぇってば!!!」
グリグリと踏みつける踵に力を入れながら、呆れた声で乱は言った。
「あのさぁ、あんたたち鏡見た事あるの?その程度の顔でよくねぇねに声かけようとか思ったよね?」
「え⁈いや、その、あの」
「ねぇねの仕事場ってさ、別名イケメンパラダイスって呼ばれてるくらいイケメン揃いなんだけど」
呆れた声で乱は続けた。