第8章 乱藤四郎
「ねぇね、ここってもしかして…‼︎」
「ふっふっふ、そう、そのもしかしてなのだよお嬢さん」
とある店の前で立ち止まり、審神者はまた端末を取り出した。そして何やらメール画面を呼び出しているらしい。店の入口にいる係員にそれを見せドアを開けてもらう。中に入るとそこは、きらびやかなブティックだった。
「ようこそいらっしゃいましたプリンセス、今日はどのドレスでお出かけになりますか?」
連れていかれた部屋で待っていたのは、プリンセス達のドレス。その中から好きなものを選んでいいと言う。乱は一瞬呆気に取られはしたものの、すぐに我に返りクローゼットへと向かう。一通り眺めたが迷わず水色のドレスに手を伸ばした。
「ボクこれにする。絶対これがいい!」
ガラスの靴を履いていたプリンセスのドレスを当てがい、乱は満面の笑みを浮かべてその場でクルリと回ってみせた。
「それじゃあ最後の仕上げに魔法をかけますね」
係員の一人が呪文を唱え、もう一人が乱の座っていた椅子をクルリと回転させる。今まで背にしていた鏡に変身した乱が映り、新たなプリンセスの誕生を知らしめていた。
「いかがですか、プリンセス」
審神者が満足気に話しかけると、乱は興奮しながらまくしたてた。
「すごいすごいすごいボクホントのお姫様みたい!!!お化粧も髪型もお姫様そのもの!!!ねぇねが特別メニューって言ってたのコレだったんだね!!!ありがとうねぇねすごく嬉しい!!!!」
はしゃぐ乱を立たせて奥のスタジオで写真を撮る。ドレスは持ち帰ることができるので、そのまま店を出た。乱は1日プリンセスとして園内を満喫した。